60人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
108
ああ、あの女性に抱き着いたことか。
「リュックの中にある包丁についてもお話を」
それは、料理するためで。
「いったん署までご同行願います」
警察官は僕の右腕をしっかりつかむと、停めてあったパトカーへと歩き出しました。
「あの…、ちょっと」
「お話は署で」
これからどうなるんだろう?
檻の中に入れられるのかな。
それは嫌だ。
もう窮屈な思いはしたくない。
おばあちゃんの墓参りをして、おばあちゃんのもとに行くんだ。
離して!離して!誰れか!助けて!!
「学ちゃん!!!」
そのとき、大きな叫び声が聞こえました。
一瞬のことすぎてまぼろしかと思ったけど、僕の名前を呼んだ気がします。
僕は首だけ後ろにひねり、声の主を確認しました。
「学ちゃん!!!」
そこには涙をぼろぼろこぼしながら僕の名前を呼ぶ、母がいました。
最初のコメントを投稿しよう!