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待って、待って。 もう無理。 頭も心もおかしくなる。 ちょっと待って。 足のつま先からじんじんとしびれ、感覚がなくなっていく。 たじろく私に、エミは大きくため息を吐き、 パンツの後ろポケットに突っ込んでいた包丁で私の左の二の腕を斬りつけた。 「…いたい!」 燃えたような痛みが走り、ベージュ色のスエットが切れ、血がにじんでいく。 「死にたくなきゃやるしかないんじゃない?」 痛みと共に絶望がやってきて、うわっと涙が溢れていく。 「…でも息子が…まだ小学生で…ひとりで…」 「じゃあ連れてく?」 「…いや」 「てか、一人で何が問題なの?赤ん坊じゃあるまいし。早くして」 学ちゃん。 あなたを一人で残していくなんて。 学ちゃん。 どうか泣かないで。 私は二階の窓を見上げ、「学ちゃん」とつぶやいた。 そしてがたがたと震える手で運転席のドアを開けて乗り込む。 エミは助手席に乗り、手慣れた感じでカーナビ設定をし始めた。 どこかの電話番号を入力するとアナウンスが浮かんで消えた。 エミが後部座席に移り、私の首元に包丁を当てると、金属の冷たさが全身に広がり、さっき切られた痛みが甦って、面白いほどに体が上下に震えた。
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