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家を出てからどのくらい時間が経ったんだろう。 車は私の知らない場所を入っている。 前から後ろに流れていく、コンビニや飲食チェーン店の明かり。 平凡な日常にあるあの明かりの下に、今私はいない。 ルームミラー越しにエミを見ると、エミは無表情でスマホをいじっていた。 無駄に細くて長いとがった包丁は座席に突き刺してある。 あれは我が家の包丁じゃない。 家族で出かける際、その包丁が突き刺してある場所に私は座っていた。 とはいえ、あまり夫と出かけることはなかったけど、 会話のない車内でいつも、窓の外を眺めていた。 私の車はちょうど昨日、車検に出した。 くたびれた自動車屋でぼんやりしてると思う。 店主の奥さんが出したお茶を無理にすすりながら、会話を探す作業が苦痛だった。でもそういう日常がずっと続くものだと思っていた。 それなのに、これは現実なのか。 今、私はどこにいるんだろう。 自分の意思とは関係なしに、知らない場所に向かっている。 頭や心はパニックなのに、誰かに操られるように、体は正常に運転している。 無意識に足が動いて歩くように、当たり前のようにそうしている。 そもそもなぜ夫は殺されてしまったんだろう。 エミが離婚がどうのこうの言っていたから不倫関係だったんだろうか。 確かに私たち夫婦はうまくいっていたとは言えない。
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