打ち抜けモブショットっ!

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この『火付け師』っていうのが何をしているかというと、 その昔『大魔道士』とか『超魔術師』と呼ばれた物凄い人達が作った都市防衛兵器を、自らの魔力で動かすっていうのが主な仕事だ。 後は掃除とかちょっとしたメンテナンスをする。 まぁ分かり易く言えば、この兵器っていうのは、魔を祓う結界を張ってくれていて、それの管理が僕の仕事ということになる。 もう少し詳しく言えば、そういう結界を張ることが出来る石碑に、魔力を注いでいるのだ。 んじゃ、そういう仕事をしている僕が何故『魔術師や魔導士』と名乗る事が出来ないかと言うと、この二つの名前は、それ自体が魔法を使うスペシャリストとしての職業名だからだ。 この分類でいくと僕はただの『魔法使い』になる。 んじゃどうやってその分類がされているのかというと、 『魔術師』の方は、同系統の魔法を3つ以上習得していて、その3つの魔法の能力総合評価がC以上であるか、 若しくは使える魔法が2つであっても、その内の一つがCクラス以上に分類できる魔法であること。 『魔道士』の方は、2つ以上の系統の違う魔法を習得していて、且つ一つがCクラス以上の分類が出来る魔法であること。 それ以外の魔法を使える人は、単純に『魔法使い』と呼ばれる。要は一つでも魔法が使えるとそう呼ばれるのだ。 ただ大抵は、魔法しか特技がないくせに、その魔法が大したことないヤツの蔑称だったりする。 だって、腕に覚えのある料理人とか、そこそこ名の知れた戦士や武道家が、ちょこっとした魔法を一つ二つ使えても、わざわざ『魔法使い』と呼ばれることなんてないからね。 そんなだから兵士の彼等が僕の事を魔法使いと呼ばないで、『魔術師』どのなんて呼ぶのは、イジリであるのと同時に気遣いであったりもする。 因みに僕が魔法で出来ることは、3つ。 炎を創ること、それを飛ばすこと、で最後のもう一つはその炎の色を変えること。 一応、炎を【創る】【飛ばす】【変える】という三つが使えるという扱いだけど、まぁ正直どれも微妙な性能だ。 どれもクラスCには到底ならないし、総合評価でも全然Cに及ばない。 僕が一度に出せる炎の大きさは精々が親指程度で、飛ばせるのは四、五メートル。で、その上速度も威力もない。 ぶっちゃけ相手が子供でも余裕で避けられる。 炎の色を変えられても、温度が上がってるわけじゃないし。 そんな感じで人に向けて放ったとしても、簡単に振り払えるし、相手に当たったとしても二、三秒で消えるという、とっても無害で儚い炎です。 まるで僕の人生の様。 炎の色を変えられるのを活かして、大道芸人にでもなろうかと思う今日この頃だったりしております。 話は逸れたけど、『魔法使い』と『魔術師、魔導士』の一番の違いは彼等には自身の持っている魔法に関しての『報告義務』がある。 魔術師はギルドに、魔導士は国やその自治体に。 何でかっていうと、クラスC以上に分類される魔法っていうのは、その殆どが人を簡単に殺すことが出来る代物だからだ。 例えば水や火を使うとして、その魔術師が、僕みたいに小指分ぐらいの体積や大きさしか一度に扱えなかったとする。 でも技術や練度がものすごく高くて、鉄を焼き切るぐらいに炎を高温に出来たり、水を弓矢並みのスピードで飛ばせたりするなら、言うまでもなく、簡単に人を殺せるのだ。 逆にそこまでの技術や練度がなくても、一度に莫大な量の炎や水を一気に生み出せるなら、農業や工業にと使えたりする。 非常に社会に貢献できるわけだ。 なのでそういう感じで魔法を扱えるなら、総合評価がCとなる。 この魔法のそれぞれのクラスの分類や総合評価については細かいカテゴリーとかが設定がされてるけど、めんどくさいのでその詳細は省く。 剣士や兵士と違って、武器を持たないでも十分に強いという事は、為政者にとってはこの上ない脅威だし、同時に大規模に影響を及ぼせる魔法を持っていれば統治者にとってこれ以上ない程の利益を産んでくれる存在になる。 なので、『魔術師や魔導士』は一流の『武道家』と同等に警戒されている。 と同時に非常に重宝されてもいるわけだ。 んで僕はというと、莫大な魔力を内包していながら、 魔力口に(魔力を扱う者にとっての水道の蛇口のようなものがある)致命的な欠陥があって、一度に出せる魔力が極めて少量という相当に残念なヤツだ。 正に始めチョロチョロ、中パッパというヤツだ。違うか。 この城塞都市にある、多くの兵士の詰め所の中の、僕が最後に回る詰め所で少々話込んでしまっていたら、すっかり辺りは暗くなっていた。
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