中間地点 **

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 紅平を跨ぐ態勢ながら、丹羽に主導権はなかった。  下着ごとハーフパンツをずり下ろされると、待ちかねたと言わんばかりに雄が跳ね出た。紅平の長い指が触れ、反応を試すかのように擦り上げられていく。 「あ、」  指の腹で柔らかにしごかれ、たちまちに硬度が増す。彼の上で上体を揺らし、腰の動きも止められない。 「んっ……」  先走りが滲む先端を指でこねられて声を失う。痴態を晒している恥ずかしさに頭が眩みつつも、全身を駆ける官能に心身が揺らいでいく。 「!」  大きく喉を反らせて叫びを堪えると、奥へと侵入した指が動きを止めた。初めて味わう感覚に、思わず息を呑む。緊張と快楽とがないまぜになった表情で、恐る恐る視線を落とす。体を繋ごうとしている相手の顔を見るのが怖い。子供みたいに怯えた表情で見下ろす先で、伽羅色の瞳が微かな驚きを浮かべて一つ瞬いた。 「……準備するに、決まってるだろ」  虚勢を張った声も掠れてしまう。……風呂場で自分で解したのとはワケが違う。前への刺激もそうだが、同じ行為であるはずなのに、自分では決して与えられない感覚に思考もなにも弾け飛ぶ。 「あ――あ、あ……っ……ん……」  大胆に探り始めた指に全身が慄く。紅平も用意していたローションが足され、想像していたよりは大分マシだが、まだなのだ。緊張と比例して増すばかりの圧迫感に、冷房を利かせた部屋でも汗が浮かぶ。 「痛い?」 「……平気」  こいつ、やっと喋った――蕩けた瞳で見返すと、しっかりと視線を絡め取られた。昂揚した顔も綺麗な恋人は、眉を寄せる丹羽にまっすぐ眼差しを注いでいる。 (俺一人がよがってるの、恥ずかしいだろ……)  当然の義務として伸ばした手は、あっさりと捕らわれた。 「あっ……」  不意に抜かれた指に情けない叫びが漏れる。激しくベッドが軋んだと思う間もなく、態勢が逆転した。 「は……んっ……」  彼のものと一緒に擦り上げられ、自身が再び勢いを取り戻していく。合わせた部分に伝わる熱が、体の奥から突き上げる官能の波を生む。 「……恥ずかしくて、死にそうだ」 「………………俺も」  息の上がった互いの表情を見つめ合い、力なく笑った。Tシャツをたくし上げる手が、裸の胸を這う唇が、丹羽の不安を溶かしては甘い喘ぎに変化させていく。 「紅平、」 「なに?」  呼びかけに応じた彼に、いつもの鷹揚さは見えない。待てない――強い欲求を示す眼差しに怯んだが、意を決して口を開いた。 「お前に会えない日々が……寂しすぎた」  一瞬だけ静止した二人の時間は、紅平が顔を背けたことで動き出した。明らかに狼狽する彼を見上げ、想いが伝わらなかったのかと絶望を噛みしめた。 「なんで、いま……そんな、嬉しいことを、言うかな」  丹羽を見ずに呟いた彼に手を伸ばす。視線とともに重ねられた手に長い指が絡み、優しくベッドに押しつけられた。
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