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「君は誰だ……?」
女の手には外国のギャング映画で見るような拳銃が握られていた。
銃口の先に妙な筒状のものがついている。あれは消音機というものだろうか。
「私? さきほどお電話した者よ。あなたが自宅にいると聞いて安心したわ。これで無事、仕事をやり遂げられるから」
確かに女の声は、先ほどの電話の相手のものだった。
まさか、この女は殺し屋?
雇ったのは智恵なのか……?
震える声で聞いてみる。
「君は僕を殺す気なのか?」
「ええ。それが私の仕事だから」
「智恵に雇われたということか?」
返事はなかった。
その代わりに、引き金にかけられた女の人差し指がゆっくりと引かれる。
プシュッという小さな音が拳銃から聞こえると同時に、胸のあたりに激痛を感じた。
手をあてると、指先が真っ赤に染まっていた。
僕は力なく、その場に崩れ落ちた。
女が近づいてきて、僕の顔を見下ろしている。
女は、にっこりと微笑みながら言った。
「智恵さんは今ごろ会社のお仲間と飲み会をして、しっかりアリバイを作っているはずよ。安心して旅立ちなさい」
銃口が今度は、僕の眉間にまっすぐ向けられた。
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