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「今どこにいますか?」
居間のソファで座って受けた電話の相手は自分から苗字を名乗ると、すぐにそう聞いた。
「え、どこって……。もちろん自宅だけど?」
相手の名乗った苗字に聞き覚えはない。スマホに表示された電話番号にも見覚えはなかった。
ふと、ある考えが浮かんだ。
妻の智恵の知人か誰かではないだろうか。
「もしかして智恵の友人か誰かかい?」
「ええ、そうです」
それで納得した。
今朝、僕は智恵とささいなことが理由で夫婦喧嘩をしてしまったのだ。
彼女は新しい車が欲しいと言い出したのだが、あいにく我が家にそんな余裕はない。
智恵には少しお金を欲しがり過ぎるところがある。
僕はそこを指摘したのだが、彼女はそれでひどく腹を立ててしまったのだ。
そんなくだらない理由で朝からちょっとばかり言い合いをし、そのまま口を聞いていなかった。
時刻は夜十時半を少し過ぎている。
もうすぐ智恵も仕事が終わって帰ってくるだろう。
僕は電話の相手に聞いてみた。
「智恵のやつ、まだ怒ってるかな?」
「いいえ、そんなことありませんよ。すごく機嫌もいいみたいだし」
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