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智成と美桜は四十三階の一室に入り、その日の穢れを洗い流した。先に智成がシャワーを浴びて、続けて美桜が体を洗って風呂場から出て来た。
智成が窓際に立っているその脇に美桜が歩み寄ると、昔よく遊んだ遊園地の観覧車が良く見えた。
「あそこにもよく一緒に行ったよな」
「そうね、楽しかったけど、あそこも去年、閉園したんだよね」
「‥‥‥」
智成に嫌な予感が走った。
窓の下を覗き込むと、トリプルタワーから遊園地へと真っ直ぐに伸びる道の両端に、それまでなかったはずの高さ三メートルほどの壁のようなものが立てられていた。
夕日が沈み、最初に観覧車がライトアップされた。
徐々に暗くなり、閉園したはずのその遊園地が灯りをともし始めた。
運営はいつまでこのゲームを続けるつもりなのか。
智成の予感に応えるかのように、遠く観覧車のきしむ音がここまで聞こえてきたような気がした。
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