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なんでこんなことになったんだろう。その疑問だけが頭の中をぐるぐるまわっている。いや、わかってる。全部僕が悪いんだ。わかってたじゃないか。わかっていたはずなのに。
もう少しだけ。
そんな気持ちだった。だって、元気がなかったから。これがないと、元気にならないから。これがないとだめだから。
絶対、あげちゃだめだから。
友達に忠告されてたけど、でも。苦しんでる姿を見たくなくて、あげれば、安らぐと思って。元気になるかもって。
もう少しだけなら、いいんじゃないかなって。また元気な姿を見せてくれるなら、ちょっとだけなら。
でも。
僕の目の前には、ぐったりと横たわる姿。わかってる、もう手遅れだ。
僕のせい。もう少しだけなら、なんて言い訳し続けて。
横たわる姿を呆然と見つめていると、おつまみ買って来たよーと友達が部屋に入って来る。そして、僕らを見て声をなくした。
「お前……」
「少しだけならいいと思ったんだ、元気になってくれるって信じて。だから」
「……馬鹿野郎」
「ごめん」
「馬鹿! あれほど忠告しただろ! これ以上やるなって! それは命に係わるからって!」
「う……」
くたり、と横たわるさっちゃん。
「サボテンに水やりすぎると根っこ枯らすからってあれほど言っただろうが!!」
「うええええええ~……」
「なっさけねえ声で泣く暇あったら新しい鉢用意しろ馬鹿!」
その後、園芸店勤務の友人による必死の救助活動によって、てっぺんにポコっと生えていた子株を別の鉢に株分けしてくれてなんとか一命をとりとめた。小指の爪ほどしかない子株を眺めていると、友人がギロリと睨んでくる。
「冬はサボテンに水やる頻度少なくていいってあれほど言っただろ」
「だって日に日にしおれていくから、水あげれば元気になるかと思って」
「直射日光当てすぎなだけだ、葉焼けしてるじゃねえかよ! サボテンが砂漠に生えてるから日当てりゃいいって勘違いしてねえか!? 風通しの良い所で直射日光避けろ! あとたまに肥料もやれ!」
「う、わかった」
「……本当にわかったのか?」
「た、たぶん?」
「よし。じゃあ今から旧さっちゃんの気持ちを味わってもらおうか。これ一気飲みな」
どん、とテーブルに置かれたのは6本入り1セットで売ってるビール。
「これと同じくらい酷な事したからやれ」
「……はい」
その後僕は二本目でひっくり返った。……ごめんさっちゃん。
END
※急性アルコール中毒になりかねないので一気飲みはやめましょう。
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