貴女を守る傘になる

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貴女を守る傘になる

「貴女を守る傘になります。」  その人はそう言って土砂降りの中佇む私を傘に入れてくれた。六月の、ジメジメとした雨がシトシト降り続く中旬頃だったと思う。毎日雨は降り止むことを忘れて、街を濡らす。 「何を、言ってるの? あなたは、誰なの?」  雨音に掻き消されそうな掠れた声でそう聞いた。 「貴女を守る傘になります。ずっと守ってみせます。貴女を僕の女主人にしても、いいですか?」  意味は分からなかった。だけど、何故だろう。放っておいたら駄目だと思った。この……被り物の下にある顔が、そう思わせているのかもしれない。 「ずっと、って言うなら死ぬまで守ってよ。何があっても私から離れないで。約束、出来る?」 「はい。勿論です。その言葉然と受け止め、本日より貴女を守る傘になります。どうぞ、宜しくお願いします。──坂部(さかべ)美鶴(みつる)様。」  この日の、この約束は、守り続けられている。彼はずっと……傍にいる。ずっと私を見ている。彼は私から離れた事など一度もない。 「貴女を守る傘になります。ずっと……」  彼は今日も私を雨から守っている。  ……。
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