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「いいかい、これはビジネスだ」
そう居丈高に言ったのは、オールバックの髪、スーツに眼鏡、ちょい悪というのには悪そう過ぎる……つまりは、カタギじゃない感が漂い過ぎる男だ。
それはここに俺がこうして居る過程を考えれば、当然と言えば当然で……。簡単に言えば200万の借金のカタに連れてこられた。俺にとっては大した額だけど、この人たちにとっては大した額じゃないだろう。
そして俺の隣のポカンと突っ立っている男、とにかく背は高い。180は余裕で超えているだろうが、ひょろっとしてなんだか生白くて弱そうだ。モサモサとした髪で目元は隠れているが、顔自体は悪くなさそう。こいつも俺と同じく借金で連れてこられたんだろうか。
「君たちは返さなきゃいけない金がある。でも君らは働くどころか金を工面する努力もしないときてる。だからこちらで仕事を用意した。この仕事なら週1日、1か月で全額返済可能だ。ここにいる間は利子もつけないでいてあげよう。さっきも言ったが、ビジネスの話だ。但し、君たちに拒否権はないと思った方がいい。……やるね?」
「……って拒否権無いって言っときながら『やるね?』じゃねーだろ! そもそも何やるかも聞いてねぇっての!」
「あぁ、いいね。その威勢の良さと柄の悪さ。見た目だけじゃなくて性格も完璧そうだ。そうだな、仕事の内容は君は嫌いじゃないと思うよ。まずは『やる』と言ってから……。後でゴネられても困るんで。やらないなら別の仕事もあるよ。あまりおすすめはしないが、ちょっと手か足か、もしくは目が片方になるが……そっちにするかい」
にっこりと笑顔で言われて背筋がゾッとする。これは、絶対ヤバイやつ! ……どうする? とチラリと横を覗こうとする前に隣の奴が口を開いた。
「やります」
……!! ってお前即答かよ、何するのかもわかんねーのに!
「嬉しいよ。パートナーがやるって言ってるんだから、きみもやるね?」
パートナーになった覚えなんてない! 初対面だぞ!! ……と喚くこともできない、怖い笑顔に思わず俺は頷いた。
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