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 会議が終わって家に帰ってくると、夫の幹夫さんが夕食を食べているところだった。 「あ、おかえり。先食べてるよ」 「ありがとう。あーあ、疲れちゃった」 「どうした?」 「それがね……」  幸恵さんが、会議で起きた「美形教師と思いきや部員の父親だった件」をかいつまんで話す。 「若いことは若いのよ。まだ38歳だって! でも、どう見たって30代前半……20代だって通るかも」 「ってことは、20歳そこそこで父親か。ん? まてよ、名前、何て言った?」 「土岐田さんよ。ときた。土に岐阜の岐に、田んぼで」 「子供、何て言うんだ?」 「えっとね……まって、名簿見るから」  ガサゴソと鞄の中から名簿を取り出す。 「え、と……キリヒコ、くんね。雨冠の霧に、比較の比に、古い……」  言い終わらないうちに、幹夫さん、箸をおいて立ち上がる。
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