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「失礼します」  がらり、と戸が開き、若い男性が顔をのぞかせる。  先生だろうか?  見覚えはない。  まだ息子が入学して半年も経ってないから、知らない先生もいるかもしれない。  でも。  こんな先生がいたなら、噂ぐらい聞こえてきそうなものだ。  そう。  こんな、カッコイイ先生……。  つい見とれてしまい、やっと我に返った幸恵さん。  ふと周りを見れば、どのお母さん方も、突然現れた美形教師に見とれてしまっている。  さっきまでブツブツ言っていた会長夫人も、例外なく。 「あの……」  ハイバリトンの、深みのある声。 「「「はい?」」」  異口同音に返答の声が重なり、一様に上ずっている。 「遅れてすみません。土岐田(トキタ)霧比古(キリヒコ)の父ですが」  え?  ええ?  えええぇぇぇっ!?
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