約束

7/7
前へ
/153ページ
次へ
「成程、ありがとう。俺はこういうのは詳しくないが、お前の腕が優れているのは何となくわかるよ。」 「わー、めちゃくちゃ褒めるじゃん!」 照れる!と言いながら俺を立たせてくれる。 そして立ち上がった俺をまじまじと見ると東雲は言った。 「見れば見るほど美形だよね、九条って。金持ちで頭も良くて顔もいいってまじで何?」 「お前もそうだろうが。」 「俺は馬鹿なんだって!」 「ははは、そんな訳ないだろ。少なくとも、コーディネートの腕は確実に俺より上だし、誇れることだろ。そういうことが一つでもあるのは凄いことだと思うが?俺は尊敬するぞ。」 「……うー、九条って、結構ヤバいやつだよねぇ。」 「は?」 「…じゃあ終わったし、はいこれ付けて!」 俺の問いにも答えずに、東雲はベネチアンマスクのようなものを差し出した。 「こ、こんなあからさまに隠して大丈夫なのか…?」 「知らない〜。でも近衛先輩に渡されたから。俺がつけようか?」 「じゃあ頼んだ。」 「おっけー!」 それから顔にマスクをつけてもらう。 と言っても目元だけが隠れるものだから息苦しさは全然感じない。 少し視界は狭いけどな。あと横が見えない。 つけ終わったら、東雲にもう一度チェックされ、OKが出たので部屋を出る。 部屋を出た瞬間、外で待っていたのか、こちらもすっかり着替えてスーツ姿で壁によりかかっていた近衛が顔を上げた。 「来たか。……うん。似合ってるんじゃねえの?可愛い。」 「可愛いはやめろ。」 「なんだよ、恋人同士だろ?恥ずかしがるなって。」 そう言いながら俺に近寄ると耳元で囁いた。 「もう父さんたち来てるから、堪忍な。」 「……………………分かった。」 本当に、今すぐ帰りたくなってきた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1032人が本棚に入れています
本棚に追加