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「成程、ありがとう。俺はこういうのは詳しくないが、お前の腕が優れているのは何となくわかるよ。」
「わー、めちゃくちゃ褒めるじゃん!」
照れる!と言いながら俺を立たせてくれる。
そして立ち上がった俺をまじまじと見ると東雲は言った。
「見れば見るほど美形だよね、九条って。金持ちで頭も良くて顔もいいってまじで何?」
「お前もそうだろうが。」
「俺は馬鹿なんだって!」
「ははは、そんな訳ないだろ。少なくとも、コーディネートの腕は確実に俺より上だし、誇れることだろ。そういうことが一つでもあるのは凄いことだと思うが?俺は尊敬するぞ。」
「……うー、九条って、結構ヤバいやつだよねぇ。」
「は?」
「…じゃあ終わったし、はいこれ付けて!」
俺の問いにも答えずに、東雲はベネチアンマスクのようなものを差し出した。
「こ、こんなあからさまに隠して大丈夫なのか…?」
「知らない〜。でも近衛先輩に渡されたから。俺がつけようか?」
「じゃあ頼んだ。」
「おっけー!」
それから顔にマスクをつけてもらう。
と言っても目元だけが隠れるものだから息苦しさは全然感じない。
少し視界は狭いけどな。あと横が見えない。
つけ終わったら、東雲にもう一度チェックされ、OKが出たので部屋を出る。
部屋を出た瞬間、外で待っていたのか、こちらもすっかり着替えてスーツ姿で壁によりかかっていた近衛が顔を上げた。
「来たか。……うん。似合ってるんじゃねえの?可愛い。」
「可愛いはやめろ。」
「なんだよ、恋人同士だろ?恥ずかしがるなって。」
そう言いながら俺に近寄ると耳元で囁いた。
「もう父さんたち来てるから、堪忍な。」
「……………………分かった。」
本当に、今すぐ帰りたくなってきた。
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