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入ってきたのは女性と男性。
恐らく近衛の両親だ。
来てそうそうに恥ずかしいところを見られて、俺は既にキャパオーバーだ。あまりの行動に、思わず両親には不自然に思われないように緩く手を振ると、意外にも近衛はスルッと離した。
漸く外れた手にほっと息を着くと、改めて近衛の両親を見る。
2人とも流石近衛の親なだけあってとても顔がいい。厳しそうな父と、優しそうな母、という印象だ。
そう言えば、今回、なぜ俺が近衛とこんな事をしているのかさっき話してくれたのだが、どうやらこの両親、特に父親から婚約者をしつこく進められているらしい。
しつこ過ぎるそれに嫌気がさした故の仕返しだ、と近衛は笑っていた。
「は、初めまして。お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません。俺は、」
「ああ、待って。慌てなくても大丈夫ですよ。話なら既に颯から聞いていますもの。私は近衛恵美と申しますわ。よろしくね。」
「そうだな。前から可愛いだの好きだの騒いでいた。全く、色恋にうつつを抜かすなんぞ近衛家の者として恥ずかしい!」
「もう貴方!こちらは颯の父親の浩一さん。」
母親は見た通り優しそうな方だ。
ただ、父親のこの反応…やっぱり男同士なんて反対されるんじゃないか?
近衛、は沢山いるから、今は颯さんでいいか。
颯さんは煩そうに顔をしかめた。
「父さんだって、母さんに一目惚れだったじゃないか。人のこと言える?」
「なんだと?!」
「あらあら、あなた達喧嘩はよして。あのね、ええと、」
「綾ちゃんだよ、母さん。」
?!まて、名前も変えないのか?!
思わず颯さんの方を見ると、大丈夫と言わんばかりに頷かれてしまった。何も大丈夫じゃない!
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