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颯さんに教えてもらった恵美さんは、あらそうだったわと微笑むと言った。
「綾ちゃん、だったかしら?私、お逢い出来るのをとても楽しみにしていたの。美味しいお料理も用意したからたくさん食べていってね。」
「あ、ありがとうございます。」
わぁ、颯さんのお母さんとは思えないほどいい人だな。
ニコニコと優しそうに微笑む恵美さんに、俺も思わず緊張が解ける。
しかししかめっ面をしたままの浩一さんはそんな恵美さんを咎めるように呼んだ。
「恵美!」
「なぁに貴方。とてもいい人そうじゃない?」
「しかしなぁ、どこの家のものか分からないんだぞ?颯の話では一般人らしいではないか!」
「もう貴方!お客様の前でそのような事を仰らないでください!失礼ですよ!」
「そうだぞ父さん。お里が知れるぞ。まだ綾ちゃんの方が行儀よく見えるな?」
「颯!!!」
「颯さん!」
火に油を注ぎに行く颯さんに、思わず声を出す。それが浩一さんと被ってしまい、慌てて失礼しましたと頭を下げた。
「……ふん。」
「もう、ごめんなさいね。この人もこれで颯のことを心配しているのよ。悪く思わないで頂戴ね。あ!料理が来るわ。ぜひ味わってね。」
もうこの空間での癒しは恵美さんだけかもしれないな。
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