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暫くは無言で料理を楽しみ、あ、勿論恵美さんは軽く話題を振ってくれるし俺もそれに応えているが、如何せん浩一さんと颯さんの空気感が最悪すぎた。
美味しいはずの料理もよく味わえずに、あっという間にデザートになってしまった。
それでも美味しかったなぁと思いながらぼんやりとお皿を見ていると、恵美さんは俺を見て微笑んだ。
「綾ちゃんはとても綺麗にお食べになるのね。素敵だわ。」
「有難うございます。」
そりゃ九条家として相応しくいられるように躾られたしな。でもそんなことが言える訳もなく。
ニコニコとこちらを見てくる颯さんを見て仕方なく続けた。
「…颯さんに相応しい相方になれるように勉強したのです。粗相があったか心配でしたが、そう言っていただけて安心しました。」
そう言うと、颯さんは少し驚いたような顔をしたあと、本当に嬉しそうに破顔した。
「そんなことしなくたって今でも十分俺と釣り合ってるのにな。でも嬉しい、ありがとう綾ちゃん。」
「……そんなこと、」
蕩けるような声色に、思わず照れくさくなって否定しようとする。その瞬間、割って入るように今まで黙っていた浩一さんが声を挟んだ。
「……そうだ、そんな事あるわけないだろう…!いくら此奴がお前と並びたとうと焼付け刃をした所で近衛の長男である颯と同等になれるはずがない!思い上がるなよ!!」
「………あ゙?」
叫ぶように言った浩一さんに、俺は思わず息を飲んだ。
しかしその瞬間、隣から有り得ないほど低い声が聞こえた。
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