近衛 颯

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ただ、その言葉を聞いた瞬間に颯……近衛がブチ切れたのは分かったから思わず出しゃばってしまったのだ。 親子で喧嘩するなら、今回限りの部外者である俺がヘイトを稼いだ方がよっぽどマシだしな。 俺は部屋をぐるぐると歩きながらやらかしてしまったことに対して考える。 「いや、それでもあれはなくないか…?」 「なにがや〜?」 突然声がかかり、弾かれたように後ろを向くと、いつものように緩く笑っている近衛が居た。 「っ、近衛か、驚かせないでくれ。」 「綾チャンが不用心すぎるだけちゃう?前ん時も会議室で副会長と話してた時、驚いてたやん?」 「俺が油断していたというか、どいつもこいつも突然湧きすぎなんだろう。…ん?まて、その時ってお前はいなかったよな?」 「せやったっけ?」 「……お前、」 まさか出たと見せかけて部屋の前にいたのか?と眉を顰めると近衛は笑って誤魔化した。 そんなので誤魔化せると思うなよ…! いつか絶対根掘り葉掘り聞いてやるからな。 と、心に決めつつ俺は近衛に話しかける。 「というか、関西弁に戻したんだな。」 「まあね。俺もすっかり綾チャンに感化されてもうたんよ。」 「感化?」 「せや、俺は俺らしくおろうってな。」 そう言って軽く笑った近衛は、そしてそのままこっちおいでと手を引いて俺をソファに座らせた。 そして隣に隙間を空けないで俺に密着するように座ると、ポツリと呟いた。 「さっきは、ホンマにすまんかった。」 「いや、あれはその、俺の方こそカッとなってしまったしな…。」 「そうか?俺は呆れられたかと思うたよ。」 「はは、なんでだ?近衛は何も悪くなかっ、近衛…?」 笑いかけようとすると、突然近衛に腕を引き寄せられ、抱きしめられた。 「なぁ、綾チャン。」 「…なんだ。」 「俺たち、ほんまに付き合わん?」 「は?何言って、」 距離が近づいた事で、鼻をくすぐるのは近衛の香水の甘いムスクの匂い。 近衛はまるで恋人にするようにぎゅっと強く抱きしめて、そのまま耳元で囁くから、吹きかけられるような息を感じてこそばゆい。 戸惑う俺に畳み掛けるように、近衛は言う。 「お前を手離したくない。」 まるで俺を閉じ込めるように、縋るように話す近衛に、俺は思わず目を閉じて彼の背中に手を回した。
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