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「さっき、言うたやん。別に俺の事を好きでなくてもかまへん。ただ綾チャンが俺のそばにいてくれたら、」
「それだと、きっと1番辛いのはお前だ、近衛。俺はお前のことをそういう対象として好きかは分からないが、友人として好ましく思ってることは間違いない。そんな大切な人に辛い思いはさせたくない。」
「そんなの、そんなの綾チャンの勝手やん!!」
「そうだな、俺の勝手だ。知らなかったか?俺だってワガママなやつなんだぞ。」
そう言って少し微笑むと、近衛ははぁ、とため息をついた。
「あーあ、何やその顔。なんで綾チャンが悲しい顔するん?ふられたの俺なんやけど?」
「は?!な、別に俺は、」
「鏡見る?めちゃくちゃ目ェうるうるしてるで。」
「う、煩いな…。」
んはは!と笑った近衛は、さっきまでのどこか憔悴した雰囲気ではなく普段の少し気だるげな落ち着いた雰囲気になっていた。
ひとしきり笑ったあと、近衛は言った。
「ま、ふられたんなら仕方ないやんな。潔く諦めるわ。」
「……あぁ、そうしてくれ。」
「今は!」
「…は?」
今はって何?
「まだまだ時間はあるやろ?今は俺への気持ちが分からへんなら、これから分からせるだけや。綾チャン、俺は諦め悪いで。覚悟しとき?」
「な、お前…!」
「取り敢えず、さっきの言い合いで父さんもこってり絞られとったで、母さんに。せやから『綾ちゃん』は晴れて親公認の彼氏になったってことやで ♡こうやって外堀から埋めてくのも悪ないよな?」
そう言うと、唖然とする俺をぐいっと引っ張ってよろけた俺のおでこにキスを落とした。
「な、な、な…!!!!」
もはや驚きすぎて言葉も出ない俺に、近衛は言った。
「んはは!驚く綾チャンも可愛ええな♡あ、取り敢えず俺の事は近衛じゃなくて、また颯さん♡でよろしくな?」
「誰が言うか!!!!!!」
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