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獅堂は俺のそんな視線に気がついたのか、勘違いするんじゃねえよと言った。
「これ、歴代E組出身の人が趣味で作ったやつだからな?ここにあったんじゃなくて、ここで作られたんだよ。」
「ここの…。」
「俺もあんま詳しくねぇけど、作ったやつは建築関係のデザイナーらしいぜ?今は。」
「そうか。」
それはまさに、この学園がE組に推し進めていた仕組みで生まれた人材なのだろう。
獅堂はお茶を飲んだあと言う。
「つまりここはなんでも許される部屋って訳だ。ここでは誰の目も気にせず自由に好きなことに打ち込めるんだよ。」
「そのような場所を作らなくても、校舎で、」
「その校舎に居づらいからこういう所を作ったって、なんで分かんねぇの?」
「……そうだな。」
確かに、E組の行動範囲はかなり狭いかもしれない。あちらの本校舎だと肩身も狭いだろうから、ここを使うのは妥当だったのかもしれない。
俺は獅堂に貰ったお茶を飲みながら言う。
「それで?この部屋の存在を俺に知らせてどうするつもりだ。」
「は?知らねぇよ。そんなんてめぇで考えろ。俺は颯さんに頼まれたから教えただけだ。この情報をどう活用するか考えるのも、多分お前の役目なんだろ。」
「………ふむ。」
近衛の意図は昔から読みづらかったが、今回は特に分かりづらいな。
俺が今1番したいのは、E組の誤解を解くこと。
S組らの生徒からの風あたりの強さを緩和して、E組が過ごしやすくしたいのだ。
その為にできるのは、やはりE組が落ちこぼれだから選ばれた訳では無いという、本当の選考理由を皆にわかりやすく伝えなければならない。
このことを近衛は知っている。獅堂とのあれこれを説明する時に一緒に伝えたからな。
つまり近衛なりに手助けしようと思ってここを見せたってことか?
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