画策

7/9
前へ
/153ページ
次へ
震える雅也が部屋を出ていくのを見たあと、俺は椅子に座った。 最近は歩き回っていたからここに座るのも久々だな。 「それで?話ってなんの事かな?」 「ああ。新歓の話なんだが、少し提案があって浅桜の意見も聞きたいんだ。」 「新歓?それなら生徒会に言った方がいいんじゃないかな?」 「いや、まずはお前に確認してもらいたい。」 そう言うと、浅桜はこてんと首を傾げつつ、分かったと返事をした。 浅桜は持っていた資料を置いて俺の目の前に来ると、話を促すように頷いた。 「実は前に調べてもらったE組についてなんだが、その問題解決に新歓を利用しようかと思ってな。」 「ああ、E組不遇問題の事だね。なに、競わせたりでもするのかい?」 「ああ。そろそろ新歓だし、ちょうどいいかと思ってな。でかい催しの中でなら、俺たちの目も、教師の目もある。平日にそういうことをさせるのは困難だし、いい機会だろう。」 俺がそこまで言うと、浅桜はなるほどねと言いながら顎に手を当てる。 「まあE組の状態については俺も前から気になっていたから反対はしないけど、何故今なのかな?それに、仮に対決させるなら、この仲の悪さで対決なんてさせたら余計に亀裂を産みそうだとは思わないかい?」 「そうだな、だから別に対決させようとは思ってないぞ。それに、それは多分悪手だろ。因縁を深くさせるだけだろうしな。」 好きなことを好きな場所で出来ないなんて、とても学校だとは思えない状況になっているE組。 獅堂に見せてもらったあの地下の秘密基地が、そのもっとも象徴となるものだ。 狭い場所に押し込められ、隔離され、隠れなければやっていけないなんてそんな酷いことは無い。 長い時をかけてそこまで追い詰められているこの状況を変えるには、少しの刺激だけでは足りない。 それこそ、風紀が今からそういうことを取り締まったところで、突然すぎる上にどの生徒からも支持は得られないだろう。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1040人が本棚に入れています
本棚に追加