理事長室

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ペタ、と自分の顔を触った榊原は考える様に固まったあとため息をつくと、突然俺の脇を小突いた。 「貴方、罪作り過ぎるのも大概にしてくださいよ。」 「は?」 「片方ならともかく、両方とも虜にするなんて、なんて人なんですか。」 「何の話だ。」 「綾斗が可愛らしいという話ですよ。」 「日本語で話してくれ。」 突然意味がわからなくなったんだが、俺の読解力の問題なのか?これは。 榊原は上目遣いにこちらを見て言う。 「少し、近づいてもよろしいですか?」 「はぁ?嫌だが。」 「そこはいいよと言う場面ではありませんか?」 「お前に隙を見せたらダメだと学んだからな。」 「つれないですねぇ。まあ、ダメと言われても寄りますけど。」 そういうや否や俺にピタリと寄ってきた。 余程嫌そうな顔をしていたのか、クスリと笑って俺の眉間をつついた。 「やめろ。」 「辞めません。貴方、忙し過ぎませんか?教室に行ったりしているのに、全然捕まりません。」 「そうか?お前も忙しいだろ。」 いくら離れても寄ってくる榊原に諦めて、返事を返す。 風紀も忙しいが、生徒会だって暇では無いはずだ。現に、資料を生徒会に渡しに行くといつも誰かいるしな。授業中の時間だっている。 「お前達、仕事し過ぎだろ。」 「それ、貴方だけには言われたくないと思いますよ?」 なんのギャグですか?と真顔で言う榊原。 別にギャグでもないし、俺は本気でそう思ってるんだぞ。 本当に、俺は割と暇な方だと思ってる。 なんせ一ノ宮や榊原は家業も手伝っているのを知ってるから。 俺には兄上がいるから余裕もあるが、こいつらは長男だったり一人っ子だったりする。その身に背負う重圧も責任も、そして負担もすごいだろう。
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