理事長室

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コンコンコンと、ノックをした後分厚い扉を開いた。 広い部屋の真ん中に座っている理事長。 と、思わぬ客人に俺は目を丸くした。 「谷塚?」 「ひぇ、あ、風紀委員長?!薫も!!なんで?!」 「それはこちらのセリフですよ。…私達、時間間違えてませんよね?」 「いや、ああ。午後はずっと空いてると言ってたはずだが。」 小声で話していると、あちらもなにか小声で話したあと、理事長がにこやかに手招きした。 「九条くん、待っていたよ。新歓の確認だったよね?」 「はい。…申し訳ない、お邪魔してしまったようで。」 「いいのいいの。元々君の方が先に約束していたから、こちらこそごめんね。遥ちゃん、あと榊原くんも、そこに座って少し待っていてくれるかい?」 「う、うん。」 「ええ。ハル、此方へどうぞ。」 慣れたように谷塚の腰を抱いてエスコートする榊原に、俺は思わず理事長をちらりと見たが、その顔は普段と変わらない優しげな笑顔のままだった。 理事長は、谷塚とよく似た黒髪を揺らして首を傾げた。 「何かな?」 「いえ、なんでもありません。こちらの方をお願いします。それから幾つか提案したいこともありますので、そちらをお読みになったあとお声がけ下さい。」 「あぁ、分かった。それじゃあその間少し待っててくれるかな?」 「そのつもりです。」 頼もしいねと微笑んだ理事長は、そばに控えていた男の人、秘書だろうか?その人に声をかけると、資料を読み始めた。
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