理事長室

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待っている間、俺はすることもないので案内された席に座って待つ。こういう時はやけに緊張する。誤字とかしてなきゃいいが。 ザワザワする心を落ち着かせるように出された紅茶を飲む。 「それで、その後どうしたんですか?」 「それはもう可愛がりましたよ!もう、俺の妹めちゃくちゃ可愛くないですか?」 「ふふ、ハルに似て可愛いんでしょうね。」 「うぅん、俺に似ては余計です…。」 俺の向かいでは榊原と谷塚が穏やかに会話している。こうして見ると、別に榊原も負け戦ではないとは思うんだがな。 なんて、1度言われたからか、谷塚の好きな人の事も考えてしまう。 もしかしたら、女性が好きなんだろうか。 それならそれは確かに、怯んでしまうかもしれない。 「九条くん、少しいいかな?」 「はい。」 ふと、理事長に名前を呼ばれる。 もう一度だけと思い、2人をちらりと見ると、榊原と目が合った。 ふわっと微笑んだ榊原に、俺も目元を緩める。 普段顔を合わせている奴がいると、ちょっと緊張も緩むな。 「ごめんね、ここのパーティについてなんだけど。」 「ああ、此方は後で説明しようと思っていたものです。このパーティは見た通り、かなり予算を圧迫しています。可能な限り抑えようとは思っていますが、それでもカツカツです。しかし生徒の中から、パーティなら身なりも整えるべきという意見が出ました。自分で用意できる生徒はいいですが、皆が皆そうでは無いでしょうし、強制にしてしまうと、それは何か違うとは思ったのですが、かと言ってこちらが準備できるほど予算の方も余裕がなく、ご意見を伺いたかったのです。」 「成程ね。パーティなんて楽しそうでいいじゃないか。けれど風紀はこの日も働き詰めだろう?その上パーティも取り締まるのは大変ではないかい?」 「いえ、むしろ生徒の出入りを会場内のみに制限できる方が助かります。持ち場も交代制にして風紀委員達も参加させる予定です。」 「うん、それなら僕が出してあげるよ。」
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