理事長室

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「それに、彼を支えてあげたいと思っているのは多分、俺だけじゃないですよ。」 それこそ榊原とかな。 あとびっくりすることにまさかのあの獅堂と同室で、結構仲良くやっているらしかった。 俺がそう言うと、理事長は今度こそ笑みを深めると、そうなんだねと言った。 その声には、決して知り合いという関係だけじゃない強い絆を感じられた。 「いつの間にか、あの子も沢山の人と仲良くなっていたんだね。本当に良かった。」 「ええ、谷塚は良い奴ですから。」 あの絵に描いたようなガリ勉の見た目は気になるが、あれもまた谷塚の魅力、なのかもしれない。 「まあそれなら、そろそろあのヘンテコな格好も辞めさせてもいいかもなぁ。」 「ん?」 「あの遥ちゃんの格好、とてもダサくないかい?何でも夜に遊び歩いてたのがバレたくなくて、わざと対極な姿にしているんだって。」 「へ、へぇ…。」 どんな理由だよ。あれがデフォではないのか。 それに割り込むように、後ろから声がする。 「ちょっと!叔父さん!!!変な事言うな!!」 「あらら、遥ちゃんにも聞こえてたみたい。」 「も〜〜〜!!!叔父さん!すぐ俺の過去話すのやめて?!」 「あはは、九条くん達なら大丈夫だよ。」 「反省してない!この人全然反省してない!!」 俺が普段見る、大人しく落ち着いた様子の谷塚とはかけはなれた姿に驚いていると、谷塚はハッとしたように俺と榊原を見て、そして頭を抱えてうずくまった。 「うわ終わった………!」 「あはは、もしかして遥ちゃん猫かぶってたの?敬語可愛いな〜とは思っていたけど。」 「ううう、だって…!」 「そうだったんですかハル?!とても可愛らしいですよ!ええ、本当に!」 「うるさい!可愛いって言わないで!男としての自尊心が死ぬ!」 吹っ切れたように榊原にも噛み付く谷塚に、俺は思わず笑った。
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