波乱

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谷塚が落ち着くのを待ちながら、理事長はニコニコ言った。 「じゃあ遥ちゃん、パーッと脱いじゃおうか。」 「うん。…でも、」 「遥ちゃんも、いつまでもその格好で居られないって思ってるんだろう?大丈夫だよ。ここには風紀委員長達しかいない。不安になればまた被り直せばいいのだから。」 そう言われると、谷塚は意を決した様に、分厚いレンズを取った。 「ハル…!」 現れた素顔に、榊原は思わずと言ったように声を上げた。 メガネに元々度はなかったようだが、やはり分厚いガラス越しで見るより顔はわかりやすい。 甘い顔立ちで、切れ長の瞳は爽やかな青年という印象が強く、どこかのアイドルのようだ。 必死に平凡だから!と言っていたが、これを平凡というのは無理がある気がする。 街をよく歩いていたと言っていた後、今までよくスカウトとかされなかったな、というのが第一印象だ。 少なくとも、庶民だとか不潔だとか言ってバカにしていた生徒たちはその見目で黙らせられるレベルだろう。 しかしそれだけではなく、谷塚は七三分けで分けられていた前髪もガッとほぐして後ろへ撫で付けた。 それだけでガラッと変わる雰囲気に、俺は内心おお!っと歓声を上げた。 あれだ、身分を隠していたヒーローの正体を見た時のような、妙なワクワク感みたいなものを感じたのだ。
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