副会長の恋

6/8
前へ
/153ページ
次へ
一ノ宮を窘めるように、いつの間にか近づいてきていた君嶋が軽く頭を叩いた。 普段俺も雑な扱いはするとはいえ、天下の一ノ宮家の嫡男に対して頭を叩くのはさすがに無理だ。幼い頃からの知り合いだったという君嶋だからこそできることだろうな。やはりかっこいい。 俺の視線に気がついたらしい君嶋は、謝るように目を軽く伏せた。うん、かっこいい。 そんな一連の動きは眼中になさそうな副会長は、紅茶を1口含むと、ほぅっと息を吐いた。 その様子は、会話の内容はともかく、まるで悩める王子だ。 「なぜ貴方にしたのかは、正直自分でもよく分からないのです。」 「ならなぜ?」 「でも私なりに理由も考えてみたのです。例えば、顔がいいこと、頭も悪くないこと、家柄もいい。それに、」 「それに……?」 今のところ、それは俺じゃなくても良くない?という理由ばっかりだが。 なぜか谷塚の方が食い気味に返答を待っている。落ち着け、テーブルに身を乗り出すのは危険だ。 「風紀委員ですから責任感や正義感もありますし。それに、貴方絶対に私のこと好きじゃないですよね?」 「は?なぜ、」 「何となく分かるものです。伊達に人の目に晒されてないので。ハルの対応を思い返してみて分かったのですが、ハルも私に対しては恐らく、巷で言う[塩対応]と言うやつですよね。貴方もそんな感じで対応してくれる気がしたのです。」 「そう、なのか……。」 「……………。」 「………薫。」 それはなんというか……。 なんというか、だいぶアレだな。 かなり副会長のイメージからはかけ離れているというか…。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1040人が本棚に入れています
本棚に追加