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人として、風紀として 1
「義景、人として生きる為には大切な事がある。それが何か、お前には分かるか?」
「……教養、知識等ですか?」
「そうだな。だからお前は日々勉学に励んでいるだろう。人としてとても重要な事だから、この国では全ての子供が等しく教育を受けられるのだ。」
そうなのですか、そう言おうとしてふと気がついた。
これは、夢だ。
そしてこの出来事は実際に僕が体験したことで、過去に父と話した時のことだ。
僕はこの言葉を聞いて、鷹野の名に恥じないように勉学に励んできた。それは今も。
だが、この後僕がなんて答えたのか、父はそれにどのような反応を示したのか、あまりよく覚えていない。
こうした記憶障害は、強く不快な気持ちになった時に自己防衛として起こると言われている。相当ショックな事を言われたのだろうかと、まるで他人事の様に捉えている。
夢だと気がついてからは直ぐだった。
突然体が宙に引っ張られるようにもちあがり、そして、気がついたら、まだ見なれぬ学生寮の天井を見つめていた。本当に夢だったようだ。
明晰夢を見るなんて、眠りもかなり浅かったのだろう。
「懐かしい夢だ。」
懐かしいけれど、嫌な夢だった。
部屋を歩いて、共同スペースの洗面所で顔を洗う。
質のいい大理石で出来た洗面台に立ち、鏡を見る。目に映るのは顔色の悪い自分だ。
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