人として、風紀として 1

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ふらふらと部屋に戻り、大量の参考書が置かれている勉強机を見る。 そこにはチカチカと通知で光るスマホも置いてある。 それを見てようやく思い出した。 最近家族と連絡をとっていない。 内容はまあ、見なくてもわかるが。 どうせ勉強は進んでいるかだの、順調かだとか、そんな事ばかりだろう。 でも、そうやって圧をかける両親は、別に僕が憎いからそうしてる訳では無いのも分かっていた。 僕の家柄はそこまでいいものでは無かった。 高級タワーマンションに住んではいるが、お手伝いなんて居ないし、送り迎えがある訳でもない。この学園の中では、むしろ下の方かもしれない。 そしてS組にいる殆どの生徒も、例に漏れず僕よりも家柄がいい人が多いのは分かっていた。 幼い頃から厳しく教育されてきたから優秀だということも何となくわかる。 だから、家柄では劣る僕は、勉強で1位になることで周りとの差を埋めるのだ。 どんなに家が金持ちでも、それを活かせなければ没落していくだけ。けれど、頭さえ良ければ様々な活動に手を広げることも出来る。 実際僕はそう思ってるし、両親にそう言われたことは無いがきっと異論は無いはずだ。 だから遊ぶ暇はないし、もっともっと頑張らないといけないのだ。 良いことをして、賞賛され、それが優遇されるのは学生までの話だ。 もっと先の未来を見た時、きっとそれは無意味な事になるはずなのだ。 だから、そんな大事な勉強時間も削ってまで風紀になる意味は、正義を振りかざす意味は、一体何処にあるのだろうか。
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