人として、風紀として 1

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わざとらしく話を逸らした聡に、聞かれたくないことでもあったのか?と思いながらも俺も談話室にいる生徒に声をかけていく。 学生寮と同じ棟にある談話室は、学年関係なく使える共有スペースだ。 広々とした空間に、ゆったりと座れるソファや、椅子、そしてカウンターがあり、カウンターでは専属のシェフが軽食やドリンクを作ってくれるのだ。つくづく金持ちって意味がわからないと思った。 一人一人に声をかけていくが、鷹野くんの行方を知っている人は殆ど居なかった。顔は知っているが話したことがないと答えた1年S組の生徒も多い。 一通り声をかけ終えると、1度シェフに声をかけたあとカウンターの方へ近寄る。 あちらはあちらであらかた声をかけ終わったらしい聡も、オレンジジュースを飲みながら俺に首を振った。 「だめ、何もわかんなかったわ。」 「やはりか。ならもう寮に帰ってしまったんだな。わざわざ手伝ってもらったのに悪かった。」 「いやいや、まあここにはいなかったって言うのも立派な情報じゃん?それにまた明日も探すんだろ?」 「まあ、そうだな。」 「じゃ、俺も手伝うわ。今日の続きと行こうぜ。」 そう言ってにっと笑った聡に、俺は微笑んだ。 「あぁ。頼りにしている。」 「おう!」
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