人として、風紀として 1

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頷いた聡に、俺も目を緩めていると、シェフから声をかけられる。 「九条様、よろしいですか?」 「ああ。もう用意できたのか?流石だな。」 「ん?何?どうしたんだ?」 「いやな、手伝ってもらってそのままなのもどうかと思って。」 そう言うと、そのセリフに察してくれたらしいシェフが俺ではなく聡の前に皿を置いた。 「オレンジのパウンドケーキです。こちらのクリームを添えてお召し上がりください。」 「甘いものは平気か?」 「え?え?平気、だけど!!」 ちょっと待って?と慌てる聡を、俺はのんびりと頬杖をついて見つめる。 この時間は小腹が空くと思ってな。 もうそろそろ夕食かもしれないが、男子高校生の胃袋ならこれくらいぺろりだろ。 「こちらの生地は甘さ控えめとなっております。オレンジピールを使っていますので少しほろ苦いくらいかと。甘さ調節としてもクリームを活用していただけたらと思います。」 「そうなのか、美味しそうだな。ほら、いつまで固まってる?さっさと食え。」 「いやそんな、えっ?俺大した手伝いしてないんだけど…?」 本当にいいのか?ここは免除対象じゃないの知ってるぞ?といつまでも渋る聡の脇を、小突いて急かす。 「そんな事ないだろ。それに、明日も手伝ってくれるんだろ?…まあ、明日は多分そこまで探さなくてもいいはずだけどな。」 「なんで?」 「明日になればわかる。」 明日になれば、な。
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