人として、風紀として 1

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小さめのパウンドケーキをあっという間に食べ終わった聡と共に、学生寮の廊下を歩いていく。 「綾斗は役職持ちだから最上階だっけ?」 「そうだ。だからここまでだな。」 「そっか〜!じゃ、また遊びに行くわ」 「ああ、俺が暇な時に来い。」 「いや、お前が暇な時全然ねえじゃん!!それ善処しますと同じ意味じゃん!」 「ははは、冗談だ。」 いつものように軽口を叩きながら、聡とはそこで別れた。 エレベーターで最上階までいきピッとカードキーをかざして部屋に入る。 1年と少し、毎日見ていればそれなりに馴染んでくる。 ひっくり返していたグラスを取って、水を入れる。 何となくテレビをつけると、夕方だからか丁度子供向けの番組がやっていた。 「正義は!絶対に負けない!!!」 張りのある声でヒーローがそう叫び、悪さをしていた敵をなぎ倒して行くところだった。 九条綾斗になってからこういうのは見た事がないが、前世では小さい頃によく見ていた。 「ヒーロー…。」 ヒーロー、ヒーローなぁ。正義の味方か。 目を伏せながら、この前の時のことを思い出す。 俺が実際に、あの二人を風紀に引き入れたいのには理由があるし、必要としている訳がある。 しかし、鷹野くんが言っていた様に、勉強と風紀の仕事との兼ね合いは難しいと感じる人もいるだろう。 部活感覚でやろうと思っていたら、多分想像以上に忙しすぎて潰れてしまう。 ならそこまでしてどうして風紀をやるのかというと、それはきっと風紀委員として学校を正す事に苦を感じていないから。 やりがいを感じているから。 俺のように押し付けられてなる人もいるだろう。 でも本当に嫌だったら辞退すればいいだけで、それでも続けてるのは少なからずそう思う人も多いからだと思う。
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