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振り返ると、そこにあるのは麗しい笑顔。
それが誰だか理解した瞬間俺の顔は歪んだ。
「こんにちは、綾斗。今日は良い天気ですね。」
「そうだな、副会長。では、俺は忙しいのでこれで失礼する。」
「まあまあそんなこと仰らず。こんなに天気のいい日です、良いデート日和だと思いませんか?」
「思います!」
「思わないが。」
………おい?
突然脇からありえない返答が聞こえ、振り返る。
聡?お前、裏切りか?
睨む俺に、聡本人も何故か焦っているようで、ごめん流れでつい!と手を合わせられた。
流れってなんだ、流れって。
一方副会長は、許可が降りましたねとにこやかに笑うと俺の手を取った。
「昨日は風紀委員室にお伺いしたのですが、まさかいらっしゃらないとは思いませんでした。ここでこうして会えるのも運命ですよね。良かったら、庭園に行きませんか?美味しいお茶を入れますよ。」
「お断りだ。俺もまだやることが、」
そう言って手を振り払おうとすると、体をスルッと近づけて密着される。
だから離れようと1歩引こうとするが、それも叶わずサッと腰を抱かれてしまった。
「おい、やめろ。」
「綾斗は隙がありすぎますね。心配です。」
「なんだと?」
「こんなに簡単に私に近づかれて…。ハルでももっとうまくかわしていましたよ。」
「くっ、お前…!」
やられた本人に何故かダメ出しをされた。
本当に最悪だな、こいつ。
俺は今度こそ引き剥がそうと、強くその手を叩き落とそうとすると、副会長の手がするりと腰を撫でた。
「ひっ、お、おい、お前、」
「おや、擽られるのは不慣れな様ですね?ふふ、ひとついいことを知りました。」
「クソ…。」
なんでこいつこんなにエスコートが上手いんだ。そんな所まで王子にならなくていいのに。
ふと視線をあげると、聡は何故かあわわわわと手で顔を隠しながら、指の隙間から俺の事を見ていた。
役に立たない幼馴染には頼っていられないな。
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