人として、風紀として 2

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振り返ると、そこにあるのは麗しい笑顔。 それが誰だか理解した瞬間俺の顔は歪んだ。 「こんにちは、綾斗。今日は良い天気ですね。」 「そうだな、副会長。では、俺は忙しいのでこれで失礼する。」 「まあまあそんなこと仰らず。こんなに天気のいい日です、良いデート日和だと思いませんか?」 「思います!」 「思わないが。」 ………おい? 突然脇からありえない返答が聞こえ、振り返る。 聡?お前、裏切りか? 睨む俺に、聡本人も何故か焦っているようで、ごめん流れでつい!と手を合わせられた。 流れってなんだ、流れって。 一方副会長は、許可が降りましたねとにこやかに笑うと俺の手を取った。 「昨日は風紀委員室にお伺いしたのですが、まさかいらっしゃらないとは思いませんでした。ここでこうして会えるのも運命ですよね。良かったら、庭園に行きませんか?美味しいお茶を入れますよ。」 「お断りだ。俺もまだやることが、」 そう言って手を振り払おうとすると、体をスルッと近づけて密着される。 だから離れようと1歩引こうとするが、それも叶わずサッと腰を抱かれてしまった。 「おい、やめろ。」 「綾斗は隙がありすぎますね。心配です。」 「なんだと?」 「こんなに簡単に私に近づかれて…。ハルでももっとうまくかわしていましたよ。」 「くっ、お前…!」 やられた本人に何故かダメ出しをされた。 本当に最悪だな、こいつ。 俺は今度こそ引き剥がそうと、強くその手を叩き落とそうとすると、副会長の手がするりと腰を撫でた。 「ひっ、お、おい、お前、」 「おや、擽られるのは不慣れな様ですね?ふふ、ひとついいことを知りました。」 「クソ…。」 なんでこいつこんなにエスコートが上手いんだ。そんな所まで王子にならなくていいのに。 ふと視線をあげると、聡は何故かあわわわわと手で顔を隠しながら、指の隙間から俺の事を見ていた。 役に立たない幼馴染には頼っていられないな。
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