人として、風紀として 2

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仕方ないから、自力で何とか副会長から脱しようと体を拗じる。 すると、驚くほどすんなり手は解けた。 「……?」 「ふふ、まあ今日はこのくらいでいいですよ。可愛い声も聞けましたし、あまり性急に距離を詰められるのも得意ではなさそうですから。」 「分かったなら、最初からこういう事はやめろ。」 「それは困ります。私は綾斗を口説きたいので。」 「俺のアドバイス忘れたのか?」 思いやりをもてって言ったはずだが。 そう言うと、副会長はニコッと微笑んだ。 「ええ、はい。でもあなたは強く迫った方が効果的かなと思いまして。」 「は?」 「押しに弱いですよね?それもかなり。」 「いや、そんな事はない。俺は、」 「…まあ、いいでしょう。では私はこれで失礼しますね。明日こそはお茶をしましょう。」 「断る。」 二度と近づくなよという意味を込めて睨むが、特にそれに反応する事もなく副会長は歩いていってしまった。 「なんなんだ、あいつ…。」 「まるで台風だな。」 「そうだな、裏切り者。」 「当たり強くない?!」 いつの間にか俺のすぐ側にいた聡は、ギャーギャーと騒ぎ出す。 「そんなことは無いぞ、(俺を見捨てた人)。」 「含みすごいな?!ごめんって!一般人に副会長相手するの無理なんだって!」 「………………そうだな。」 「いやすげー怒ってる!ごめん!!」 謝る聡に、思わず笑う。 別にそこまで引き摺ってたわけじゃない。半分は反応を見て遊んでいただけだ。 それに気がついて怒る聡を宥めて、そしてそのまま寮で別れた。 自分の部屋につくと、飾っていた家族写真が目に入る。 「………取り敢えず、兄上には失敗してしまったかもしれないと言っておくか。」 どうにも手応えを感じられなかったし、浅桜にも明日言っておこう。 そこまで考えると、俺は候補生名簿の、鷹野くんの名前の隣にバツをつけた。
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