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仕方ないから、自力で何とか副会長から脱しようと体を拗じる。
すると、驚くほどすんなり手は解けた。
「……?」
「ふふ、まあ今日はこのくらいでいいですよ。可愛い声も聞けましたし、あまり性急に距離を詰められるのも得意ではなさそうですから。」
「分かったなら、最初からこういう事はやめろ。」
「それは困ります。私は綾斗を口説きたいので。」
「俺のアドバイス忘れたのか?」
思いやりをもてって言ったはずだが。
そう言うと、副会長はニコッと微笑んだ。
「ええ、はい。でもあなたは強く迫った方が効果的かなと思いまして。」
「は?」
「押しに弱いですよね?それもかなり。」
「いや、そんな事はない。俺は、」
「…まあ、いいでしょう。では私はこれで失礼しますね。明日こそはお茶をしましょう。」
「断る。」
二度と近づくなよという意味を込めて睨むが、特にそれに反応する事もなく副会長は歩いていってしまった。
「なんなんだ、あいつ…。」
「まるで台風だな。」
「そうだな、裏切り者。」
「当たり強くない?!」
いつの間にか俺のすぐ側にいた聡は、ギャーギャーと騒ぎ出す。
「そんなことは無いぞ、聡。」
「含みすごいな?!ごめんって!一般人に副会長相手するの無理なんだって!」
「………………そうだな。」
「いやすげー怒ってる!ごめん!!」
謝る聡に、思わず笑う。
別にそこまで引き摺ってたわけじゃない。半分は反応を見て遊んでいただけだ。
それに気がついて怒る聡を宥めて、そしてそのまま寮で別れた。
自分の部屋につくと、飾っていた家族写真が目に入る。
「………取り敢えず、兄上には失敗してしまったかもしれないと言っておくか。」
どうにも手応えを感じられなかったし、浅桜にも明日言っておこう。
そこまで考えると、俺は候補生名簿の、鷹野くんの名前の隣にバツをつけた。
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