人として、風紀として 2

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ーーーー 興味深そうにこちらを見つめる翡翠の瞳に、僕は思わず膝に置いた手を固く握った。 ずるいなぁ。こんな真っ直ぐに人のことを見つめてきて。この人の前だと嘘もろくにつけなくなりそうだ。 あの後、九条さんと加賀さんが出ていったあと、ふと僕は携帯を手に取った。 毎日一通ずつ増えるメールは、いつも夕方に届く。 件名しか見えないが、その内容はいつも勉強という言葉がチラついていた。 今日の分も既に来ていた。 だからなんとなく、なんとなくメールを開いたのだ。 「……これ。」 そこには、僕が思っていたようなことは書いてなくて、ただ体調は悪くないか、寂しくないかとか、ただ僕のことを心配している内容だった。件名を見れば【Re:Re:Re:勉強に使う教科書】と書いてある。全く内容と関係の無い件名だ。Reと書いてあるから、多分僕が前打ったメールに返信するという形でメールを送信しているんだろう。 「…はは、なんだよそれ。」 急に馬鹿らしくなって思わず笑った。そしてもう一度メールの内容を見て、僕は、この学園に入学して始めて、メールの返信を打った。 そこに書いてあった返事を見て、僕は、さっき出ていった九条さんの言葉を思い出した。 『人との繋がり』 強く、美しい緑の瞳を持ったあの人は、真っ直ぐに僕を見つめてそう言っていた。 やられた、と思った。彼の言っていたことは間違っていなかった。なんて人だ。 もしかして、僕の過去も全部見透かしてるんじゃないか? なんて、そんな馬鹿なことを考えていながらも、蘇るのはさっきの彼の言葉ばかりだ。 「僕自身が必要、か。」 本当、ずるい人だ。
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