1031人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
ーーーーーー
鷹野くんが、ぽつりぽつりと教えてくれたことに、俺は納得していた。
なるほど、人として大切なことは知識と教養。そこまでしか聞いていなければ、確かにあそこまで意固地になるのも仕方なかったのかもしれない。
でも続きがあったようで、彼に送られてきたメールにはこう書かれていた。
「それから、それらを活かして、たくさんの人と関わることだ。」
偶然にも、俺が昨日言ったことと似ていて少し驚いた。顔も知らない鷹野くんのご両親、とても気が合いそうだ。
鷹野くんのご両親(仮)と心の中で握手していると、鷹野くんは言った。
「だから、その最初の1歩として風紀委員の立場を活用しようと思いました。勉強の方も、九条さんに教われば問題ないですよね?」
「勉強なら浅桜の方が教えるのは上手いと思うが。」
「いえ、九条さんが、いいんです。」
「そうか?なら俺でよければ、時間が取れる時に教えよう。」
1年の範囲なら俺も少し復習すれば教えられるだろうし。
そう思いながら頷くと、ちょうど浅桜が帰ってきた。
「あーあ、また誑かしていたの?」
「誰が誰をだ。くだらない冗談はよせ。」
今そう言う話題は副会長のせいで地雷なんだ。やめてもらおうか。
「いやいや、全く。…冗談だったらどんなにいいか。」
「浅桜?」
「なんでもないよ。じゃあ鷹野くん、そろそろ犬飼くんが来る頃だから、彼に教えて貰いながらここの書類を仕分けしてくれるかな?」
「……彼は既に仕事していたんですね。」
「初日からね。綾斗も頼りにしているみたいだよ。」
「そう、ですか。」
何故かひりつく空気に首を傾げながら、俺はようやく増えた候補生にとりあえず安堵した。
あと一人、獅堂の方も上手く行けばいいんだがな。
初日の態度を思い出し、俺はため息をついたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!