人として、風紀として 2

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ーーーーーー 鷹野くんが、ぽつりぽつりと教えてくれたことに、俺は納得していた。 なるほど、人として大切なことは知識と教養。そこまでしか聞いていなければ、確かにあそこまで意固地になるのも仕方なかったのかもしれない。 でも続きがあったようで、彼に送られてきたメールにはこう書かれていた。 「それから、それらを活かして、たくさんの人と関わることだ。」 偶然にも、俺が昨日言ったことと似ていて少し驚いた。顔も知らない鷹野くんのご両親、とても気が合いそうだ。 鷹野くんのご両親(仮)と心の中で握手していると、鷹野くんは言った。 「だから、その最初の1歩として風紀委員の立場を活用しようと思いました。勉強の方も、九条さんに教われば問題ないですよね?」 「勉強なら浅桜の方が教えるのは上手いと思うが。」 「いえ、九条さんが、いいんです。」 「そうか?なら俺でよければ、時間が取れる時に教えよう。」 1年の範囲なら俺も少し復習すれば教えられるだろうし。 そう思いながら頷くと、ちょうど浅桜が帰ってきた。 「あーあ、また誑かしていたの?」 「誰が誰をだ。くだらない冗談はよせ。」 今そう言う話題は副会長のせいで地雷なんだ。やめてもらおうか。 「いやいや、全く。…冗談だったらどんなにいいか。」 「浅桜?」 「なんでもないよ。じゃあ鷹野くん、そろそろ犬飼くんが来る頃だから、彼に教えて貰いながらここの書類を仕分けしてくれるかな?」 「……彼は既に仕事していたんですね。」 「初日からね。綾斗も頼りにしているみたいだよ。」 「そう、ですか。」 何故かひりつく空気に首を傾げながら、俺はようやく増えた候補生にとりあえず安堵した。 あと一人、獅堂の方も上手く行けばいいんだがな。 初日の態度を思い出し、俺はため息をついたのだった。
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