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そうは言いながらも俺の言葉に揺れているのか、獅堂の言葉にキレはない。黒曜石のような真っ黒な瞳も不安げに揺れていた。
「お前がどうしてこの学園に来ようと思ったのかは分からないが、E組だから虐げられて当然、みたいな考え方は辞めなさい。」
こういうことはあまり言いたくないが、他のAや
B、それにS組だってクズなやつが居ない訳では無い。俺は風紀だからそういう奴を沢山見てきたが、決してE組だけにそういう奴がいる、なんてことは無い。
クラスの分け方は成績順だ、人となりで分けている訳では無いのだから。
未だに迷ったような瞳をしていた獅堂は、その言葉を聞いて諦めたようにため息をついた。
「アンタは知ってるか分かんねぇけど、E組って相当嫌われてるんだぜ。ほかのクラスに比べて人数も少ねぇのは、見せしめだからだろ。『きちんと勉強しないとこうなるぞ。』ってな。オレの親もそう言って、……恥ずかしがってた。」
そう言って目を伏せる獅堂の顔は、あまりよく見えない。
「こういう奴なんだよ、オレたちは。色んな奴らから見捨てられた可哀想な掃き溜め。
だから、よく分かんねぇけどあんたもオレの救おうとしなくていいんだぜ、別に。オレたちはオレたちで支え合ってかなきゃ、多分、寂しくて無理になっちまうんだよ。」
これ、情けねぇ話な。と言った獅堂に、俺は頭を抱えた。
なんて事だ、これを今まで放置していたのか?歴代風紀は、教師たちは。
彼の目はキラキラと優しげな光を讃えているのに、口から出てくるのは信じられない事実ばかり。それを落ち着いた様子で話す彼に、入学してから彼が誰に、何を聞かされてきたのか想像するのは難しかった。
「…それは、可哀想な掃き溜めだって言うのは、誰が言った言葉だ?」
そんなこと、絶対言っちゃいけないだろう。
本人たちを前に言ったやつがいるなら、絶対ぶん殴ってやる。
獅堂は俺の言葉に目を見開くと、軽く笑った。
「っは、変な奴。何アンタがキレてんだよ。」
「それはそうだろう。ここは学校だぞ?学ぶために、己を磨くために入るもので、そうやって自分をめちゃくちゃにする為に来るところでは無い。」
「そんなのアンタが言っても仕方ねぇだろ。別に大丈夫だぜ?ここはここで自由にしてんだ、きっとアイツらあんま気にしてねぇよ。」
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