E組

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今はまだ会いたくない、というか本当ならいつでも会いたくない。 大丈夫、あいつはまだ一階にいるし、何とか回避しながら降りて帰れば、と考えながら窓から離れた瞬間、コンコンと窓から音がして、その後すぐにガラッと開かれ、気が付いたら俺の視界はぐるっと回っていた。 「っ、なに!?」 「やっほ〜!会いたかったで?綾チャン♡」 ドサッと床に倒れ込みながら俺の体を抱え込む男に、俺は全てを諦めた。恐らく、まな板にあげられた魚の如く死んだ目をしているだろう。 「上見たらいるねんもん、来ても〜たわ♡ん〜、あいっ変わらず腰ほっそいね?それに相変わらずええ匂いもするわ。」 「ひっや、ちょ、やめろ!」 グリグリと身体に顔をすり付ける男の頭を押し返す。しかし、丁度くすぐったい所をグリグリされるからどうも力が入らない。 男は、嬉しそうに首を傾げた。 瞳と同じく真っ赤に染められたサラサラの髪が、ぱらりと落ちた。 「ほんで、どうしてここにおんの?綾チャン。珍し。」 「それをお前に言う必要は無いよな、近衛(このえ)。」 「綾チャン冷たーい!他人行儀やめてぇや?ウチらの仲やろ?」 「お前との関係に、仲もくそも無いだろうが。」 えー、と言いながらも、床から起き上がりつつ俺を抱きしめて離さないこいつは、近衛(このえ)(そう)。 こいつは3年E組の不良なのだが、去年初めてであった時から何故か俺に対してセクハラをかましまくる、まあその、なんというか、元祖副会長みたいなものだ。 いやでも、さすがにこいつと比べるのは副会長にも悪いかもしれない。 しかしこいつの家である近衛家は、日本で割と名の知れた名家五家の中に入るお家柄だ。とてもじゃないが信じられん。 ちなみにその中には俺のとこの九条家と、会長の所の一ノ宮も入っている。
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