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そんな近衛の、二階にあるはずの空き教室に、窓からダイレクト侵入できてしまう脅威の身体能力は相変わらず健在だった様だ。
しかしそのしなやかな身体は、今俺を拘束するためにがっちりと固まっている。
「はぁ、はぁ、ほんまに可愛いなぁ綾チャンは。俺、めちゃめちゃ興奮してきたわ…。」
「は?!ふざけるな、離せ…!」
「そないな事言うて、ここ、相変わらず弱いんやろ?ほら、ふ〜!」
「んっ、ぁ、クソ、本当にふざけるなよ!」
「あ〜〜!かぁわいいなぁ。」
たまらん!と再び俺の髪に頭を埋める変態に鳥肌が立つ。
あーーもう、だから嫌だったんだ。
なんでこいつこんなに力強いんだ?!腕の拘束から全く抜け出せない。
近衛の鋭い赤い目は、蕩けるようにこちらを見つめている。
俺の足を触ろうとしている手も、そっと撫でるように動いていてくすぐったい。
この為す術なく好き勝手されている感じが、俺はこいつには叶わないのだと思わされているようで、すごく嫌なのだ。現在進行形で男としての自尊心をゴリゴリ削られている音がする。
苦い顔をする俺も無視して、近衛はよいしょ、と俺の体を動かした。
背後から抱きしめるような形だった体制が、近衛の足に横たわるように置かれる。姫抱きのような体制、と言えばわかりやすいだろうか。
とにかく屈辱的だ。
近衛は、俺の顔に自分の顔を近づける。サラリとした赤い髪が流れ落ち、影を作った。
「最近全然会われへんかったから、ほんまに寂しかったんやで?あ、でもな、聞いて聞いて?」
「………なんだ。」
「綾チャンと会われへんかった時、新しいお気に入りみつけてん!ハールーって言うんやけどな?」
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