E組

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「まあ綾チャンが望むなら?いい事しよか?」 「どうも、さようなら。もうお前に頼むことは無いだろうな。」 そんなことだろうと思ったわ! 俺がスタスタと教室を出ようと歩くと、さらに後ろから声をかけられる。 「うそうそ!その風紀の件や!俺もこの現状は少し飽きてきてん。手ぇ貸したる。」 「はぁ、そうか。ありがとう。」 扉にかけていた手を引っ込めて、近衛の方をむく。俺で遊ぶんじゃないよ、この不良め。 赤い髪が、教室に差し込んできた日によって煌めく。本当、顔だけはいいんだがな…。 「そ!の!か!わ!り!頼みたいことがあんのや!」 「…なんだ、言ってみろ。」 「……ま、これは終わってからでえいわ。さ、そろそろ授業も終わってまうで?さっさと帰りぃ。」 そう言うと、本当に特に引き止める理由はなくなったのか、バイバーイと手を振っている。 そのあまりに自由な態度に、思わず怒りも胡散する。 じゃあな、と声をかけ空き教室から出る。 近衛は厄介だが、彼はどの学年のE組にとっても特別な存在だ。そんな近衛が手を貸してくれるなら、どうにかなるかもしれない。 少し前の、優しい瞳をしていた1年を思い出す。 あんな顔で、あんなことを言わせてしまった事は、思ったよりショックだった。 俺は、風紀委員長としてちゃんとやっていたと思っていたが、その結果があのクラスだ。 ずっと放っておいたのも事実だ。 「兎に角、皆からE組についての情報も集めないとな。」 獅堂になんのしがらみもなく風紀に入ってもらうには、E組にはびこる問題を解決するのが多分1番近道だろうからな。
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