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近衛のお願い
近衛は近くの会議室に入ると、その辺にあった椅子に座った。
それに習い、俺も近くにある椅子に座る。
「で、お願いってなんだ?というか、なぜこんな所に…?」
「ん〜、綾チャンの事探しまくっとる王子様がおるそうやん。それ対策や。」
「あぁ…。」
副会長の噂はE組まで広がってたのか。
そしてこの男がそれ気遣ってわざわざ人の少ない会議室に入るのも驚きだ。
「ま、そんなことはええやん。でな?お願いなんやけど、ちょっと俺の彼女になってくれへん?」
「……帰ってもいいだろうか?」
想定していた最悪を超えてくる天才なのか?
こいつは。
ちょっと散歩付き合ってくれない?の気軽さで言われたとんでもない要求にドン引きする。
一気に距離を取る俺に、近衛はニコニコと笑いながら手を振った。
「あ、ホンモノの彼女ちゃうで?ま、俺個人的にはそれも大歓迎なんやけどな♡」
「はいはい。で?どういう意味なんだそれは。」
「いやそのまんまや。俺の両親に彼女として紹介させてくれへん?って事や。」
「申し訳ないですが、謹んでお断り申し上げます。」
「心の距離が一気に開いてもたな〜。大丈夫やって、勿論偽やで?フリやフリ。」
振りって言ってもな、俺の顔使って彼女とか、九条家の息子として難しいと思うんだが。
「それに、その、兄上が許してくれるとは思えないんだが…。」
ああ見えてあの人も結構ブラコンだからな。
「ああ、哉斗の事?大丈夫やって、九条ってことがバレなければええんやろ?こっちで顔バレないようにするし。」
「しかしな、俺は男だぞ?それに180cmを誤魔化すのも難しいと思うが…。彼女のフリさせるなら、それこそ浅桜とかの方が適任だろう。」
「もー、相変わらず心配性やん!大丈夫やって!てか、綾チャンには拒否権ないんやで?これは来週の土曜に迎えいくから、よろしくな〜って話や。」
「は?あのな、そりゃ俺だって手伝いたいが現実的に考えて無理だと、」
「んはは、分かった分かった。んじゃま、取り敢えずそういうことやから。よろしくな。」
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