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暫く無言で作業していたが、俺はふと呟いた。
「…なんだか懐かしいな。」
「何がですか?」
「お前にセクハラされないことが、だ。」
「あぁ、前まではそこまで関わり無かったですよね、私たち。私も貴方のことは興味無かったですから。」
「それを当人の前で言える胆力が凄いな…。まあでも、そうだな。」
でも、これくらいの距離感でいれば、副会長も良い奴なのだろう。
「お前も常に紳士なら、きっと好かれるだろうにな。」
「それはいつもは変態だってことですか?」
「大体あってるだろう。」
酷いですねぇと呟く彼は、それでも穏やかな面持ちのままで、普段にまして王子様然としている。
その様子は、あれとのギャップを考えると、残念なイケメンってこういうことを言うんだろうな。と切に思わせてくれる。
「まあ、それも含めてまたお前の良さなのかもしれないが。」
「………そうですかね。」
「あぁ。想いを伝えられるのも、まっすぐ相手にかけ寄れるのも、凄いことではあるよ。…ちょっと過激すぎるところもあるけどな。」
こうして距離をとって思うのは、紳士的ではあるけれど同時に副会長との壁も感じるな、ということだ。丁寧で、優しくて、常ににこやかな彼はどこか一線引いているように見える。
きっと自分に本心を出すことは無いんだろうなと思わせる壁を感じるのだ。
それと比べれば、あの変態モードの時は素直な彼の一面を見ているとも取れる。変態だけど。
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