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「いつかそう言うお前の気持ちも、谷塚に受け止めて貰えたらいいな。」
俺は恋をしたことは無いけれど、恋ってきっとキラキラして楽しいことだけじゃないと思う。
嫉妬したり、焦がれたり。嫌な気持ちになることもあるだろう。
けど、こいつの態度を見ていたら、仮に相手も両思いだったら凄く安心しそうだなとも思う。
常に自分を想ってくれるのは何より嬉しいことだと思うし。
ま、嫌がる相手に迫るのは論外だけど。
「……本当に、そういう所がずるいんですよね、貴方って。」
「は?」
「いいえ?ただ、薮蛇だったかなと、自分の選択に少しだけ後悔しているところです。」
「なんだそれ。」
それから、何故か黙ってしまった副会長に釣られて俺も無言で作業する。
一つ一つの背表紙を見ていたら、先程副会長に教えてもらったものと同じものを見つけた。
「お、あったぞ榊原。」
「本当ですか?良かったです。」
「あぁ。…しかしこれ毎回探すのも大変じゃないか?」
「えぇまあ。けれど中学の時もそうでしたから、段々慣れるものですけどね。」
「しかしなぁ…。」
こんなご時世に紙資料ってな…。
しかもこんな莫大な量。
ちょっとどうにか出来ないか検討だな。
「ま、兎に角見つかってよかったな。」
「ええ、本当に有難うございました。」
助かりましたと微笑んだ副会長に、俺も笑い返す。
「じゃ、俺はもう戻る。……前回の案は却下してしまったが、着想自体は悪くないと思った。引き続き期待しているぞ。」
「えぇ、是非期待していてくださいね。」
その声にひらりと手を振って応えると会議室を出た。
窓からすっかり西日が差し込んでいる。
もう、風紀室にも人はいないかもしれないな。まあでも取り敢えず顔だけ覗かせるかと思い、風紀室へと向かうことにした。
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