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「入るぞ。…ってなんだ、お前だけか?獅堂。」
風紀室にいたのは獅堂だけだった。
ソファにダラっと座っていた獅堂は、目線だけちらりとこちらに向けた。
「あ?…ちっ、んのようだよクソが。」
「少し様子を見に来たんだが。お前だけか、他のやつは帰ったのか?」
「あぁ。つっても家でも仕事するとかほざいてやがったぞアイツら。」
飛んだワーカーホリックだな。と吐き捨てる獅堂に苦笑する。
すっかりブラックな風紀委員としての行動が板に付いてしまった1年に申し訳なくなる。
まあ最初は慣れないから仕事が溜まってしまうのもあるのだろう。けれど申し訳ないのは変わりないから量を少し調節してみるか。
これでもだいぶ楽になった方なんだがな。
「で?獅堂はどうしてここに?」
「帰んのがダリィからだよ。暇つぶしだよ暇つぶし。」
「そうか。」
あまり聞きすぎるのも良くないよなと思い、取り敢えずコーヒーを入れることにした。
「お前もコーヒー飲むか?」
「いらねぇ。」
「そうか。」
じゃあ俺の分だけでいいな。
コーヒーメーカーに1人分の珈琲豆をセットして、暫くぼんやり眺める。
しゅーとお湯を沸かす音が聞こえ始めたのを見て、俺はコーヒーカップを棚から出した。
「……あんた、あの颯さんに頼み事って、どんな頼み方したんだよ?」
「うん?」
「風紀のあの宣言も、どうせあんたが手を回したんだろ?颯さんなら俺の風紀入りなんてどうでもいいと思ってそうだし。」
「いや…まあ、交換条件を付けてもらったんだ。」
「ふぅん。」
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