約束

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俺の手を取って座席へ上がらせた近衛は、反対側から乗り込むと俺の横に座って足を組んだ。 今日は学園も休みだ、だから当然近衛も制服ではなく私服だ。 格好は本当にラフで、白いシャツにジーパンだ。シンプルで飾らないデザインだが、質感などから高級そうな感じは伝わる。俺は詳しくないから細かくは分からないがな。こういうのはうちのメイドの方が詳しいんじゃないかな。 不良のボスとか言われているくせに、こういう姿を見るとちゃんと金持ちなんだなと思う。 その姿がサマになってるのもまた、本人の顔面の良さのお陰かもしれない。 ま、かく言う俺も今日は適当に普段兄上に決められて送り付けられる服だ。 考えるのは面倒だから助かるんだが、それを聡に話すと苦い顔されるんだよな。 揺れない車内で、適度な速度で流れていく景色を見る。 車内でかけられているのはクラシックだ。 これはショパンのノクターン15番だな。 ショパンのノクターンと言えば2番が有名だが、彼の作る曲は個人的に好みの様で、俺的にはハズレが少ない。大体全部好きだ。 それにピアノ曲は大抵は耳に優しいし、リラックス出来る。 …まあリストとかでなければの話なのだが。 だからロマン派からの選曲はいいと思う。 うん、これを選んだ人はセンスがいいな。 「綾チャン、緊張してる?」 「それはそうだろう。大体お前、押し切ってここまで着いてきてしまったが、本当に俺がお前の彼女になれるのか?」 「勿論。あ、言い忘れてたんやけど、綾チャンは俺の彼氏ってことやから♡」 「は?!男のまま紹介するのか?!」 「そらそうやろ!むしろそのガタイで女性は厳しいんちゃうか??」
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