約束

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「いや、まあそうなんだが…。」 それはそれで問題もありそうだけど、いいんだろうか。というか、世継ぎ残せないぞ? それに男同士に世間は寛容になってきたとはいえ、異性恋愛してきたであろう親に受け入れられるかどうかはまた別の問題ではないかと思うが。 「なに、綾チャンはそういうの無理?」 「いや、俺は恋愛は自由でもいいとは思うが…。」 「ならええわ。」 「うーん。」 近衛がいいって言うならそれでいいけど…。 俺の存在が近衛家の喧嘩の火種にならないことを祈ろう。 そうして暫く走った後、車が止まったのは大きめな門の前だった。 「ここが俺ん家の別荘や。あ、本家はちゃんと関西にあるんやで。」 「そうか。まあ行き来も面倒だしな。」 ま、普通なら引っ越すんだがな?? 家増やすっていう選択をするのがまたボンボンって感じだ。怖。 運転手が門に向かって何かすると音もなく空いた門を潜り、よく手入れされた庭を通って大きい館の前に停車した。 「降りるぞ。綾ちゃん、足元に気をつけろよ。」 「……誰だ?」 いつもの関西弁はどうした。 それだとただのイケメンになってしまうぞ、お前。 俺は動揺したが、そういう反応は慣れているようで、近衛は気にせずに肩をすくませた。 「親も関西生まれのくせに、社交界ではあまり歓迎されないから治せとか言われたんだよ。だから仕方なくな。…何が悪いんだろうな?関西弁、俺はめちゃくちゃ好きやねんけど。」 「そうだったのか…。」 ああいう所では、そういう偏見にまみれたジジイは沢山いる。本当に、嫌な世界だよな。
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