約束

6/7
前へ
/153ページ
次へ
「はーー、なんというか、風紀って面倒くさそー…。」 「そうだな、お前の尻拭いもさせられるしな。」 「あれはさぁ、ちょーっと子猫ちゃんたちの喧嘩?みたいな感じじゃん?」 「どこの子猫が包丁持ち出して振り回す喧嘩をするんだ。」 「わはは、てきびしー!」 俺の毒にもへらへらと笑っている東雲にため息を吐いた。全くこいつは、散々注意したのに全然懲りないのはどういうことなんだ。 そうやってくだらない話をしてる最中にも、東雲の手は止まらずに、服を着替えさせ、鏡の前に立たせるとそこに移る俺を見た。 黒に近い、うっすら紫色も混じったような色のスーツで、胸元のピンバッジは藤の花をあしらったものだ。 これ、九条だとバレないか?と思ったが大丈夫大丈夫と取り合って貰えなかった。 「うん、ミステリアスな感じでいいじゃん!てか顔は隠すんでしょ?勿体ないなー、この緑の目に合うアクセも見繕いたかったよ。」 「そうか?」 「そうだよ。東雲家って宝飾も手懸けててさ、俺もそれにつられてか昔っから人に合うアクセ見つけるのが好きなんだ。」 「なるほどな。」 そう話しながら、今度は俺の頭をいじっていく。 その動きはとても慣れていて、なるほどこれは確かに近衛も見る目があるなと感心する。 東雲は俺の髪を櫛ですきながら話す。 「俺はバカだから家は継がないんだよねー。けどもうプロのコーディネーターって事で仕事は貰ってて。それで今回あの五家のうちの近衛から声かかってまじでラッキー!とか思ってたんだよ。そしたらその相手がまさかの九条とか、世間狭すぎ!みたいな?」 「そうか、もう仕事しているなんて凄いな、東雲は。」 「へへ、そうでしょ?っと、でーきた!」 ほい、鏡みてー、こんな感じ!とあわせ鏡で後ろも見せてくれる。 「髪短いからあんまり弄れなかったんだけどさ、さっき席見せてもらったら多分、九条が座る席の向かいと、その左隣にご両親座るっぽくて、左側から顔見られるかなと思って左サイドだけ髪を上げてみた!ま、顔は隠すみたいだけどさ。」
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1032人が本棚に入れています
本棚に追加