俺の幼馴染みは吸血鬼でした。

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吸血鬼。 夜の眷属、月明かりの化物。 太陽に焼かれると死ぬ、夜行性の生物。 そう形容される吸血鬼に、紅葉はなっていた。 「いつから……吸血鬼に、」 場所は変わらず、男の死体もそのまま。 でも、俺の思考は、なぜか冷えていた。 「えっとね、私のおかあさんが吸血鬼と人間の混血で、おとうさんは人間なの。 だから、私は4分の1だけ吸血鬼の血を引いてるの」 「でも、昔は……引っ越す前は、全然太陽の下でも平気そうだったじゃないか。」 「うん。 昔は、私も吸血鬼の能力的は全然無かったし、吸血鬼の血を引いてることなんて全然知らなかった。」 「じゃあ、なんで」 「この街を引っ越してすぐかな。 ある日、太陽に当たると、ヒリヒリ痛んで。 それで、おかあさんに言われて、ヴァンパイア検査キットを使ったら……。」 陽性だった、という事だろうか。 「ねぇ、怖くないの?」 紅葉はそう聞いてくる。 「なんで? 紅葉を怖がる理由が、どこにあんだよ」 俺が聞き返すと、紅葉は少し怯えたような顔をしながら、 「私は、もう人間じゃないの。 日に当たると、消えちゃうような、バケモノなんだよ。 それでも、倫太郎お兄ちゃんは私を怖がらないの?」 紅葉は、そう言って俺を見つめてくる。 それは、昔の紅葉となんら変わりなくて。 「紅葉は、何も変わんねぇな。」 「え……?」 「泣き虫なとこも、その目も」 「……変わったよ」 「いや、変わってねぇ。 ヴァンパイアがなんだ。 それがどうした。」 「……じゃあ、私のこと、怖くないの?」 「当たり前だろ。 むしろ、嬉しいくらいだ。 昔の幼馴染みにまた会えたんだからな。」 そう言うと、紅葉は、目に貯めていた涙をはらはらと流していく。 「う、う、うぁお兄ちゃん、倫太郎お兄ちゃん……」 「あぁ」 「ずっと、ずっと、色んな人にバケモノって言われて、それで、私……」 「あぁ」 「ずっと、寂しかった。 だって、みんな、私を殺しに来るの。 私は、いらないモノなんだって、殺しに来るの。」 「あぁ」 「倫太郎お兄ちゃんは、こんな私を、愛してくれるの?」 「当たり前だろ。」 「本当に?」 「あぁ」 「……じゃあ、明日も、この場所に来て。 私は、そこで倫太郎お兄ちゃんに愛を捧げるから。」 「分かった」 「……それじゃあ、また明日」 「……また明日」 いつかと同じように別れる。 紅葉は、死体の処理を始めたようだった。
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