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待ち合わせの場所に行くとそこには。
「紅葉……?」
血まみれの紅葉が倒れていた。
「ん……あ、倫太郎兄ちゃ……」
紅葉はダルそうに体を起こす。
「どうしたんだよ、それ……」
「あはは、ちょっとしくじっちゃった……」
「しくじったって、何を」
「うーん……。
人に見られちゃったんだ」
そう紅葉は力なく笑う。
その笑顔は、とても儚くて、昔とは違う美しさを秘めている。
「ねぇ倫太郎お兄ちゃん。
私の愛を捧げるって言ったよね」
「言った、でも今はそんなこと、」
「倫太郎お兄ちゃんの血が欲しい」
「は……?」
「倫太郎お兄ちゃんの血が欲しいの。
私と、同じ仲間になってほしいの。」
「か、何を言って、」
「ほんとはね、昔から、倫太郎お兄ちゃんが欲しかったの。
だけど、昔の私は、ただの人間だったから。
でもね、今なら倫太郎お兄ちゃんを貰える。
倫太郎お兄ちゃんの血を。
体の一部を。」
紅葉はそう言ってくる。
「それに、今は血が足りてないの。
血が足りたら、すぐに倫太郎お兄ちゃんに私の血をあげるから。
だから、お願い」
紅葉は物憂げな瞳を向けてくる。
その瞳は、どうあがいても逆らえるような物ではなくて。
「……ああ。
それが、紅葉の願うものならば」
「……ありがとう」
そう言うやいなや、紅葉はオレの首筋に噛みついて来る。
牙が、自分の皮膚を切り裂く感触がする。
刹那、倦怠感が全身を襲ってくる。
血を吸われる。
恐れるべきことなのに、どこか快感を感じる。
すると、急に飢えを感じる。
血が欲しい。
心の、体の奥底からの欲望。
俺は、欲望のままに紅葉の首筋に噛みつく。
紅葉は、最初は少し体を強張らせたが、抵抗するようすも無く大人しい。
そのまま、喰い喰われて俺は眠りに落ちた。
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