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炎
建てつけの悪い入口の戸をガラっと開け、定食屋の厨房から威勢のいい声が聴こえる。
お冷で喉を潤して煙草に火をつけると、テレビで遠い外国の戦争のニュース。
こうして一日の糧の為に代価を稼いでいるのに、人が意味もなく死んで逝く。
無関心という主義主張、病んでいるのは世界の全てだろう。
店主のおやじのいつものセリフ。
「どーでえ景気は」
おやじがまだ小僧だった頃、この国で戦争があった。
誰だって死にたくはないだろう。国家が人殺しを命じて、自分の命を奪われる。
喰ってく為に死ぬ気で働く、生き残る為に必死で殺す。
人間の宿命ってやつは、どこまでも儚く厳しい。
奥のテーブルを覗くと、キ〇ィちゃんマスクの鼻を押さえる制服の女学生。
慌てて煙草を灰皿でもみ消す。
こんな店に女の子ひとりで来るなんて、度胸がある子だ。
「ニラ餃子定食ニンニクたっぷりでお願いします」
俺は悟った。
この娘はツワモノだ、世の中の浮き沈み酸いも甘いも知っている。
常識の言いなりになることが生き残る術(すべ)だと。
まだ若かった頃、ニキビ面で修正エロ本に騒いでいたガキの俺には、
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